長谷川先生の講演会に参加して  −普通の部分の子育てを忘れずに−
北沢地域 S.

 ふたばの会の顧問でもある臨床遺伝専門医の長谷川知子先生のダウン症を持つ人たちに対する姿勢には頭が下がります。それ故、講演会には多くの方たちが参加されました。また、ふたばの会会員の成人された方には、お一人で参加され、3時間以上におよぶお話を熱心にノートしながら聞かれている姿も見ることができました。

普通の部分の子育てを忘れずに
 「ダウン症」にこだわった子育てをしていないか?実際は、どの子も「普通の部分」を持っているのに「ダウン症」の部分に偏った子育てをしているようだ。子どもの将来を考えるならば、普通の子に対するように、愛情と信頼関係を基盤に、五感(視・聴・触・嗅・味覚)の体験、遊びのルール・・など「普通の部分」をきちんと育てるバランス感覚が親には必要。
 早期療育については、子どもの立場から何のための療育か、親は見定める必要がある。それ故、我が子を理解するために、よく観察する親の目が重要になってくる。本来、療育は、「ダウン症の特徴」の部分、例えば、他の子どもより弱いところがあれば、その弱いところにどのように関わるかを教えてくれるものであり、何処かへ行って何かやれば良いということではない。そのことを親が理解することがまず第一。子どもの療育より親の療育が先にされなければならない場合もある。

ダウン症の特性を知って対応を考える
 親は子どものためにまず我が子の特性を知ることです。子どもを見る目を養い、子どもへの関わり方を知るトレーニングが必要です。そのための例をたくさん挙げて下さいました。

(抜粋)
 ・ゆっくり育つので幼児性が長く残る。→ゆっくりじっくり丁寧に、結果を焦らずに。
 ・言葉の発達は特に遅くなります。→教え込まず、言葉が育つ環境が必要です。
 ・耳から聞いた言葉をそのまま覚えても理解するのは苦手です。
 ・わかる事できる事も方向や場が変わるとできなくなる。多種多様な経験が必要。
 ・筋道立てて考える力もしっかりあるが、答が出るまでに時間がかかります。
 ・自我がしっかり育っていないと、他人の立場で考え行動し苦しくなってしまいます。

 各項目に関しても具体的なお話があり、我が家でも思い当たるところがありました。手遅れということはない、気がついたとき実行あるのみとばかり、その日の夕飯から親が大皿から取り分けてやる方式を改め、量やダイエット、他の人のことも考えながら自分で皿にとる、自分で判断することができるように見守る方式に変えました。親は何でも手を出してしまう事を反省した次第です。

バランスのとれた成長・発達が大事
 筋道を立てて育てることの大切さのお話がありました。以下、先生のレジュメからの抜粋です。

 子どもは誰も特異な部分は自然に発達しますが、不得意なところはなかなか上達しないものですし、できれば避けたいと思うでしょう。不得意なことに対しては、自分の努力や他人からの援助が必要になります。それも自分に合ったやり方でなければ上達は望めないでしょう。ダウン症の子も同じです。嫌なことを強制的にさせられたら、ますます嫌になってしまうでしょう(それをガンコと言われますが)。
 得意なことは好きでしょうし、自発的にやり、上達していきます。でも、不得意と思われていることも、本当は得意なのに、別の不得意な部分で抑えられているかもしれません。また、得意なところだけが伸びて、不得意なところが遅れてしまって、アンバランスな発達になっていることもあります。これに気づかないと、後で大きなツケがきてしまいます。
早期療育で発達を伸ばすよりも、バランスがとれた発達に留意することが大事ではないでしょうか。

 最後に、先生のお話の中で、「子育て」は親がやることで、医師に聞かれても対応できるものではない。本来は家計生活の中で親が自分の力で解決すべきことだと思う。親自身が考え、体験し、同じ障害を持つ子どものいる先輩の親に相談して欲しい・・・とありました。先生がいつも言っていられる、子育てに必要なのは親の自立。子どもに自立して欲しいと願えば親自身も自立し、自分で考えることができる人にならなければと思います。また、「ふたばの会」には親が自分で考え、体験し、自立する過程をサポートしていくという大事な役割があることを改めて考えることができたと思います。