谷口奈保子氏講演会に参加して −ぱれっとの家いこっと−
北沢地域 N.

 NPO法人ぱれっと 谷口奈保子氏の講演会に参加しました。谷口さんありがとうございました。そしてこの講演会を企画してくださった皆様に感謝です。

 障害のあるなしにかかわらず、すべての人があたり前の生活ができる社会の実現を目指す、という谷口氏のお話に共感し、心の中で何度もうなずきながら聞きました。私自身、障害を持つ子どもはなぜ皆と一緒にいられないのか?なぜ同じことをさせてもらえないのか?なぜ障害者と健常者をわけるのか、ずうっと疑問を感じてきました。理不尽と思ってきました。

 谷口氏は言います。社会というのは様々な人たちで構成されている。小さな赤ちゃんから、おじいさん、おばあさんまで、障害のある人ない人、外国の人。でも30年前、知的障害者を街で見かけなかった。知的障害のある人がどこで生活しているのか、どこで働いているのか、全く見えなかった。障害のある人も社会の一員であり、地域の一住人であるのに、地域に障害者がいないのが不思議だった。健常者は障害者と関わる機会がなく、触れることもないまま一生を終わってしまう人もいる。それはすごい不自然なことであり、奇異に感じられたと。

 谷口氏は養護学校ボランティアを経験して、学校を卒業した知的障害者を受け入れる器が社会にないことを知ります。あるとしたら親が作った作業所で、そこで親と一緒に働く。当時はそれしかなかった。親子で働いてそれで自立といえるのだろうか?しかし安心して彼らを押し出せる社会がない。それは親の責任ではなく、社会の責任ではないのか。谷口氏は29年前に「ぱれっと」を立ち上げます。

 「ぱれっとの家いこっと」は障害のある人もない人も一緒に暮らす家です。グループホームではないので世話人はいません。健常者が障害者を助けるのではなく、お互い相談しながら、より良い生活ができるよう協力しあう。この、障害者が一方的に世話になるのではなく、健常者と障害者が対等の立場で共に住む、という発想は今までなかったのではないでしょうか。「いこっと」は福祉施設ではなく単なる賃貸アパートですから、建設にあたっても特に近隣に何も説明しなかった、というのがまた痛快でした。

 まだスタートして一年なので、これが通用するのかどうかはまだ分からないとのことですが、障害のある人は皆さんずっとここに住みたいと言うそうです。ただ、親御さんの心配は食事管理と健康管理。世話人がいないということで、ある程度自分で管理が出来ないと「いこっと」に住むのは難しいかもしれません。グループホームと「いこっと」の中間のようなものを作れたらいいなあと私は思いました。これからは近隣とふれあっていきたいとのことで、ここが地域の様々な人が交流する場になったらと、こちらの夢も膨らみます。

 障害があると言っても皆違う。社会の一員として生を受けた以上、障害のある人も社会の中できちんと生きていかれるよう、個々の障害にあった支援をするべきだ。従来の、障害者を守る福祉、上から与えられる福祉ではなく、障害者を社会に押し出す福祉をという谷口氏には、社会を変えていくという強い信念と、社会を変えてきたという自信を感じました。

 20年たてば社会は変わりますとは心強い言葉。社会が変われば福祉も変わるのに親の会は世代交代ができない、だから駄目なんですと痛い言葉もいただきました。ふたばの会は子どもたちの将来に何を望むのか、何をすべきなのか、きちんと考えていきたいです。だれもが地域であたり前に暮らせる社会の実現を目指して、私も歩んでいきたいと強く思いました。


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